砂糖の蟻の巣2010/04/20 17:27

砂糖の蟻の巣

 砂糖の蟻の巣              

 ヨーグルトに付いてくるグラニュ糖が大量に溜まってしまった。消費するあてもなし、どうしたものかと途方に暮れていたところ、以前からやってみたかった実験の事をふと思い出した。それは、砂糖を詰めたビンでアリを飼ったら砂糖の巣穴を掘るか、というたわいもないもの。出典は「できそこない博物館/星新一」である。星新一といえば「ショート・ショート」を思い浮かべるのが普通であるが、私はこの人の真骨頂はエッセイにあると思う。このテーマも氏の思考実験が発端。もっとも、主題はナマケモノのアリを作り出すとどうなるか、というものだったが。
 さて、実験である。残念ながら、グラニュ糖の顆粒ではアリは巣を作らなかった。というよりは作れなかった。水分が乏しいため顆粒同士がうまくかみ合わず、巣穴は掘るそばから崩れてしまうのである。誠にもったいない話であるが、このグラニュ糖は廃棄処分となった。
 気を取り直して次の実験に着手。今度はスーパーに足を運び、ケチることなく「上白糖」と「三温糖」の1㎏詰めパックを買い込んだ。後者は糖蜜が完全には抜け切れてないため茶色を呈しており、ほのかにカラメルの香りがする。その分だけ値が高い。わざわざ二種類の砂糖を用意したのは、アリが両者を選り好みするか、つまり、どちらかに集中的に穴を掘るかどうか、ということも確かめてみたかったためである。
 ビンに両者を半々に詰め、集めてきたアリを放ち、当座の食料として、ビスケットとチョコレートのかけら、野菜くず、などを撒いておき、セロハン紙の上に水を含ませたガーゼを重ねたものを隅っこに添えておいた。アリたちの気が散らない(?)ようにビンの周りは厚紙で覆い、さらに北側の静かな部屋に設置した。
 そのまま三日間放っておいたところ、アリたちは砂糖の大地を縦横無尽に掘り返し、見事な巣穴を作り上げた。(各写真参照)
かくして、アリは砂糖でも砂地と同様に巣を作ることが確かめられた。巣穴は「上白糖」にも「三温糖」にも分け隔てなく掘られ色や含有物の有無には左右されないことも分かった。坑道はどうみても無秩序で、アリたちは勝手気ままに掘り進んでいるようにも見受けられる。
 ガーゼに含ませた水はときおり飲んでいる様子であるが、餌には集まりはするものの消費した痕跡は見当たらない。当たり一面に砂糖が敷き詰められているのだから、カロリーの低い餌をわざわざ集めるまでもないという訳か。彼らが巣の材料を食料と認識しているのかどうかは、結局のところよく分からなかった。穴を掘るときに出る土砂(砂糖)は地表に運び出し、地表で拾い集めた食料(砂糖)は後生大事に巣穴へと運び込んでいるのであろうか? 巣穴を活発に行き来するアリたちを見ていると謎はますます深まっていく。こいつら一体何を考えているのだろうか?
 この実験結果を星さんに捧げる (2007年8月3日)

 あらためて動画を撮影し、YouTubeへUPした。
「Paradox of ant's sweethome (sugar nest).」で検索できます。 (2010年4月20日)
http://www.youtube.com/watch?v=cKFNGJOtDcs

 NHK特ダネ投稿DO画にUPしました。(2010年5月11日)
http://doga.nhk.or.jp/doga/viewvideo.jspx?Movie=48411824/48411824peevee308872.flv

http://toukou.nhk.or.jp/doga/movies/detail/287


動画へのコメントで多数見受けられた疑問への回答;
 蟻は数が少ないとあまり働きません。大量に捕獲してやると、居住区が狭くなったと感じるのか、一斉に巣作りを始めるようです。エサはビスケットや野菜の屑を上面に少しだけ撒いてありますが、消費した様子はありません。よく分かりませんが、やはり砂糖粒を食べているみたい。水は必要かと思いペットボトルのフタに少量入れ、上面に置いてあります。この映像は、最初の蟻入居から10日目くらいです。
 瓶の中央は紙を丸めた筒が入っており、完全な上げ底です。砂糖は瓶の周辺にしかありません。決して無駄遣いはしておりませんのでご心配なく。また、瓶のフタには穴を空けてガーゼを貼ってあるので窒息の心配もありません。なお、この蟻さんたちは録画後に元の巣周辺へ解放いたしました。きっと「良い夢を見た」と思っている事でしょう。

動画版「砂糖の蟻の巣」へはこちら
http://dagaya.asablo.jp/blog/2010/05/14/5087304

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